ウイルスに対する治療は最近までワクチンを利用してきたが,ワクチンが作られている(使われている)ウイルス疾病とワクチンが作られてこなかった(使用に耐えるワクチンを作ることが出来なかった)ウイルス疾病がある.
インフルエンザの治療は,長らくワクチンが使われてきたが,ワクチンの効果は不十分であり,ワクチンを接種する人や接種しない人がいた.ところが,タミフルができ,さらにゾフルーザ,リレンザ,イナビル,ラピアクタというノイラミニダーゼ阻害薬ができた.ノイラミニダーゼが阻害されると,感染後にインフルエンザウイルスが細胞外に放出されなくなるのでウイルスの増殖が抑制される.
一方アビガンは核酸アナログ(自然の核酸に似ているが,正常に作用しない)でRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害剤することによりウイルスの増殖を抑制する.効き方が違うのである.反アビガンの人がインフルエンザの薬がコロナに効くはずがない,などと嘘を垂れ流しているが,理論的にはアビガンはコロナウイルスにも効果があるのである.
コロナウイルスによる病状の悪化は二段階である.はじめに感染によりウイルスが増殖し,スパイクタンパクが血栓を生じさせるフェーズ①があり,その後,サイトカインストームによる組織炎症による肺炎を含む臓器障害が生じるフェーズ②である.
コロナウイルスの治療薬(イベルメクチンやアビガンなど)は初めのフェーズ①の時に使わなくてはいけない.中等症から重症になるフェーズ②に対して治験を行うので効果が出ない.これまで日本では,PCRをして軽症の場合,隔離するが,治療薬を使わず,悪化するのを待ってから治療をしている.薬も与えられず隔離される人々はかわいそうである.感染したと思われたら,治療薬を使うべきである.それも早期に抗ウイルス薬を使うべきである.
コロナウイルスは,ワクチンによる治療がなかなか上手くいかないウイルスである.それは昔から分かっている.
1981年の論文である.伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)とはねこのコロナウイルスです.
Antibody-mediated enhancement of disease in feline infectious peritonitis: Comparisons with dengue hemorrhagic fever
猫伝染性腹膜炎における抗体を介した疾患の増強:デング出血熱との比較
翻訳
概要
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に反応する高力価抗体を含む猫血清で受動免疫した非免疫子猫は,FIPV抗体陰性の血清で前処理した子猫に比べて,FIPVチャレンジ後の発病が早かった。抗体を感作してFIPVにチャレンジした子猫は,感作していないFIPVにチャレンジした子猫に比べて,発熱,黄疸,血小板減少などの臨床症状が早く現れ,急速に死亡した.感作された子猫の平均生存期間は、非感作の子猫に比べて有意(P<0.05)に短縮された(平均±SEM、それぞれ10.0±0.6日対28.8±8.3日)。誘発された病変は、線維性腹膜炎、播種性肉芽腫性炎症、壊死性静脈炎および末梢静脈炎などであった。FIPV抗原,免疫グロブリンG,補体(C3),フィブリノゲンは,免疫蛍光顕微鏡により病変部で検出された。
人のデング出血熱(DHF)の病態は、実験用の子猫のFIPの病態と非常によく似ている。FIPでもDHFでも、
非中和抗体が単核食細胞へのウイルス感染を促進したり、免疫複合体の形成、補体の活性化、二次的な血管障害によって急性疾患を引き起こすと考えられる。
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)とはねこのコロナウイルスです.
FIPVチャレンジとはコロナウイルスに感染させることです.
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に反応する高力価抗体を含む猫血清で受動免疫した子猫とは,コロナウイルスに暴露され抗体を生じた他の猫の血清を輸血された子猫であり,
FIPV抗体陰性の血清で前処理した子猫とは,コロナウイルスに対する抗体を含まない血清を輸血された子猫である.
この論文の示唆することは中和抗体の量が少ない抗体カクテルを用いた治療は,コロナ感染症を悪化させ,ADEを生じさせる可能性があると言うことである.中和抗体の量が少ない抗体カクテルを用いた治療とはどういうことかというと,コロナウイルスが変異して,以前のコロナウイルスに対する抗体が含まれる抗体カクテルが,患者の感染しているコロナウイルス変異株に中和抗体として作用しない時,ということである.