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この時代を生きていく上で,よく分からないことを,少しでも理解できるように努めていきたい.時間をかけて,このブログを書いている理由は愛する人達が気づき,生き延びてくれるように願うからである.

コロナ肺炎治療薬

コロナウイルスの治療薬として,効果があるとして初めて目にした薬は,カレトラ(ロピナビル・リトナビルの合剤)であった.
2020年2月14日のBloomberg News,「地獄のドア」たたく-新型肺炎、死も覚悟した武漢市の21歳男性 に記載されている.
(引用:39度の高熱となった葉さんは病院を再び受診。医師は新型コロナウイルス感染の治療で有効性を一部示していた抗エイズウイルス(HIV)薬「カレトラ」を投与。体温はその日のうちに37度まで下がったという。)
COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方  第1版(2020年2月26日)によると,”ロピナビルはHIV-1に対するプロテアーゼ阻害剤として有効性が認められている。シトクロームP450の阻害によりロピナビルの血中濃度を保つためリトナビルとの合剤(ロピナビル・リトナビル)として使用される。コロナウイルスに関する明確な作用機序は明らかにされていないが、以下に示すようにin  vitroや動物モデルでMERSへの有効性が示されており、COVID-19に対してもバーチャルスクリーニングで有効である可能性が示されている” となっている.

そこで,コロナウイルスがどのようにして感染するかを調べてみた.
ウイルス 第61巻 第1号,pp.109-116,2011に”2. プロテアーゼ依存的なコロナウイルス細胞侵入”の文献がある.
これによると”エンベロープ糖蛋白(S蛋白)は,宿主プロテアーゼ(トリプシン,エラスターゼ,カテプシン,TMPRSS2)に切られて活性化される.”そして”SARS-CoVの場合は「細胞侵入の瞬間」にS蛋白が切られて膜融合開始の引き金が引かれる.”となっている.コロナウイルスのエンベロープ糖蛋白(S)は細胞侵入の瞬間に宿主プロテアーゼによる開裂を受け,膜融合活性が発揮される.SARS-CoVのS蛋白を活性化する宿主プロテアーゼは,トリプシン,エラスターゼ,カテプシン,TMPRSS2である.SARS-CoVは感染初期に肺胞上皮表面のTMPRSS2を利用して,また重症肺炎時には免疫細胞が作るエラスターゼを利用して細胞に侵入する可能性があると記載がある.つまり,コロナウイルスは肺に存在するヒトの蛋白分解酵素の中のいくつかを使って,コロナウイルス自身の膜を細胞膜と融合させ,ウイルス遺伝子を細胞内に運び込むのである.

プロテアーゼ阻害剤による呼吸器系ウイルスの制御
この報告書によると,”急性呼吸器感染症に関わる多くのウイルス(インフルエンザ、コロナ、パラインフルエンザ、メタニューモ等)は、肺に存在するプロテアーゼを利用して増殖することが知られており”この報告書の著者,松山 州徳氏は,2012年に、セリンプロテアーゼ阻害剤「カモスタット」がTMPRSS2を特異的に阻害し、コロナウイルス(SARS-CoV、HCoV-NL63)の細胞侵入を抑えることを報告している.

プロテアーゼ依存性ウイルス病原性発現機構とTMPRSS2  〔ウイルス 第69巻 第1号,pp.61-72,2019〕
によると,コロナウイルスは,TMPRSS2 を用いた経路がより優先的に利用されると報告している.

そして,CellのVolume 181, Issue 2, 16 April 2020, Pages 271-280.e8に
SARS-CoV-2 Cell Entry Depends on ACE2 and TMPRSS2 and Is Blocked by a Clinically Proven Protease Inhibitor
が載っている.
つまり,コロナウイルスが細胞に侵入するときに,蛋白分解酵素が用いられるが,それを阻害するのが,カレトラ(ロピナビル・リトナビルの合剤),カモスタット(商品名フォイパン),ナファモスタット(商品名フサン)である.

一方,アビガンとレムデシビルについては,以下のような薬である.

アビガン(ファビピラビル)
日本臨床微生物学会2019の
[総   説]ファビピラビル(T-705)―  ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤  ―
によると,ファビピラビルの作用機序は,細胞内に取り込まれたファビピラビルが細胞内酵素により代謝・変換され,ファビピラビル・リボフラノシル三リン酸体(favipiravir-ribofuranosyl-5’-triphosphate)となり,RNA-dependent RNA polymerase (RdRP)の基質として認識されることによりRdRpを選択的に阻害するものである。

レムデシビル
レムデシビルは体内で代謝を受けてその活性型GS-441524三リン酸に変わる。GS-441524三リン酸は、ウイルスのRNAポリメラーゼを混乱させて、ウイルスエキソヌクレアーゼ (ExoN) googによる校正(正しい塩基配列に修正すること)を邪魔するアデノシンヌクレオチドアナログ(核酸分子アデノシンの類似物)であり、ウイルスRNA産生の減少を引き起こす。RNA鎖の合成を終わらせるのか、突然変異を引き起こすのかは不明である.ウィキペディアより

Current knowledge about the antivirals remdesivir (GS-5734) and GS-441524 as therapeutic options for coronavirusesによると
レムデシビルはヌクレオシドアナログとして、ウイルスのゲノム複製プロセスをターゲットとして、RNA-dependent RNA polymerase (RdRP)阻害剤として機能する。 RdRpは、CoVがRNAベースのゲノムを複製するために使用するタンパク質複合体である。ホストがレムデシビルをアクティブなNTPに代謝した後、代謝産物はアデノシン三リン酸(ATP、このプロセスで通常使用される天然ヌクレオチド)と競合して新生RNAストランドに組み込まる。この置換基を新しい鎖に組み込むと、RNA合成が途中で停止し、さらに数ヌクレオチドが追加された後、RNA鎖の成長が停止する。 CoVには、他のヌクレオシド類似体を検出して削除できる校正プロセスがあり、これらの薬剤の多くに対して耐性を持たせているが、レムデシビルはこのウイルス校正活動を上回り、抗ウイルス活性を維持しているらしい.
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