憲法改正において,
緊急事態条項の扱いがどうなるのか,気になる部分である.
17世紀イギリスの政治哲学者ホッブズが「リバイアサン」を著しているが,リバイアサンとはもともと『旧約聖書』の「ヨブ記」に出てくる怪獣のことである.この地上において最強のものを象徴したことばで,ホッブズは,地上で最強のリバイアサンは,我々が契約を結んで作り出した国家であるとした.
憲法とはこの「リバイアサン」である国家の活動を制限し,国民の権利を闇雲に奪うことがないように,国家の権利を制限するものである.イギリスのマグナカルタのように,国家(王)の権力を制限するものとしてできあがってきた.
しかし,日本人はそのことをあまり理解していない.憲法は,英語でconstitutionであり,逆にconstitutionとは,政体,国体,国の有り様,ということでもある.憲法は国民を縛るために存在するのではなく,「リバイアサン」に足かせをはめるために存在するもので,その意義は大きい.
憲法改正して,緊急事態に対応できるようにするのは良いことであるが,カナダのトルドー政権のように,
新型コロナウイルスワクチン接種義務に抗議した「フリーダム・コンボイ」に緊急事態権限を発動すると言うことも生じた.この時は個人の銀行口座凍結が行われた.
私も,緊急事態条項を作成し,緊急時には,政府が速やかに活動できるのがよいと考えていたが,世界中でコロナパンデミックが発生したとき,
オーストラリアや
ニュージーランドが,ワクチン接種を拒否する人々をどのように扱ったかを知るにつれ.国家のトップあるいは少数の指導者が,国民全員の運命を左右する権力を持たせることには慎重であるべきと考えるようになった.