自分達の身体の中の免疫担当細胞達がどのくらいの寿命なのかと思い,調べてみると
白血球(リンパ球を除く)数時間から数日
マクロファージ 数ヶ月
樹状細胞 3~5日
リンパ球 ~生涯(メモリーB細胞,メモリーT細胞)
形質細胞 ~生涯(長寿命プラズマ細胞)
となっている.
赤血球の寿命は120日であるから,「はたらく細胞」のように,赤血球が白血球と出会うとき,白血球さん,は毎回初対面であると思われる.
ここで,形質細胞の寿命を調べていたら,
「免疫記憶の権威にきく 本当に効く「ワクチン」を作るには」というサイトが見つかった.その中に,獲得免疫の記憶についての語られた部分が興味深い.部分的に引用させていただく.
黒崎知博特任教授(大阪大学免疫学フロンティア研究センター副拠点長)と新中須亮特任助教へのインタビューである.
B細胞は抗原と戦った後に数が減少するが,生き残りのB細胞がメモリーB細胞となり次の襲撃に備えてリンパ組織を巡回し続ける.ウイルスとの戦いが終わると胚中心の中にいるB細胞からメモリーB細胞が分化する.従来は「親和性成熟が成された(つまり、戦っていたウイルスをよく認識できる)B細胞から分化するのだろう」と言われていた.ところが「胚中心B細胞の中で、抗原への親和性成熟のあまり進んでいない細胞が、メモリーB細胞に分化誘導されやすい」ということが分かった.
「ちょっと驚きますよね。その理由を考えてみると、たぶんこういうことなのだろうと思います……。親和性成熟が進んだB細胞というのは、ある特定の抗原に対してのみ強く反応する細胞です。他の抗原に対しては反応できない」
「これに対し、親和性成熟が進んでいない胚中心B細胞から分化誘導されるメモリーB細胞は『特定の抗原だけでなく、それを含むもう少し広い範囲の抗原に反応できる細胞』である可能性があります」
「つまり、多少変異を起こしたウイルスなどが再度襲ってきた場合、親和性成熟が進んだB細胞は対応できないけれど、親和性成熟が進んでいないB細胞なら対応できるかもしれないわけです。戦いのあとの巡回役の兵士には『少し広く目配りできる兵士』を配置しておくというシステムなのではないかと思います」
「たぶん、メモリーB細胞は長寿命プラズマ細胞とは違う存在意義があって存在しているものではないかと思うのです。骨髄にいる長寿命プラズマ細胞は親和性成熟が進んだ後の細胞。つまり、特定の抗原にだけ反応する細胞です」
「それに対して、メモリーB細胞はもう少し狙いが『ゆるい』細胞です。プラズマ細胞に変化する前の状態の細胞で、いろいろな抗原に対応できるような『広い範囲をカバーする細胞』なのです。特定の敵との戦いを得意とするプラズマ細胞といろいろな敵に対応できるメモリーB細胞の『二段構え』にして防御を強くしているのではないかと思います」
非常に狭い範囲のエピトープ(抗原決定基)のみを相手にする抗体を産生する抗体産生細胞はメモリー細胞にはなりにくい.ということのようですね.